わたし-I’m-②

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もっとも、そのダイニングバーにおける勤務経験は、わたしの人生において極めて大きな経験となりました。フリーターという立場でありながら責任ある役割を委ねられ、一日に12時間に及ぶ過酷な労働も厭うことなく完遂できました。何にもまして、多種多様なお客様と出会い、真心を込めたサービスを提供することに無上の喜びを見出していたのです。当時の店長からは商いの真髄を数多く学びました。業務終了後には、店長や仲間たちと杯を交わしながら、サービスの向上や売上増進のために熱く議論を戦わせ、時には衝突することも厭わない日々を過ごしました。従業員の誰もが自店に深い愛着を抱き、「この店を地域で一番にしたい」という共通の熱意に燃えていたのです。

【店長としての挑戦と創意工夫】

やがて、そのダイニングバーを運営する企業の正社員へと登用され、ほどなくして店長の重責を担うこととなります。総席数180席、月商1000万円という大規模な店舗の運営を、突如として任されたのです。折しも同じ通り沿いの至近距離に、本社が最新の設備を誇る飲食店ビルを建設しました。人々の流れは、必然的にその新しく壮麗なビルへと吸い寄せられていきました。

しかし、わたしは新興勢力に屈することを良しとせず、既存店舗の魅力を最大化するために創意工夫を凝らしました。

第一に注力したのは、接客サービスの「質」の徹底的な追求です。ホールスタッフを各エリアに最適に配置し、担当テーブルを明確化しました。お客様がメニューから目を離した瞬間に注文を伺えるよう待機し、箸を落とす音が響けば、即座に清潔な替えを供する俊敏な対応を徹底させたのです。また、使用済みの取り皿を交換する際には、さりげなく追加の注文を促す心配りも欠かしませんでした。さらに、会話から記念日であることを察知すれば、店側からのサプライズとして特製のデザートをサービスすること。お客様のテーブルで鉄板のステーキにソースをかけて大きな音を出すこと。デザートの山盛りアイスにスピリタスをかけて炎を立たせながら運ぶなど、お客様を驚かせ、喜ばせることに心血を注ぎました。

わたしはサプライズでお客様が驚き、喜ぶのを見るのが大好きでした。午前0時には照明を落とし、音楽を切り替えて各卓に蝋燭を灯す「シンデレラナイト」を敢行。女性客にケーキを振る舞うこの趣向は平日の恒例行事となり、次第に「逢瀬に最適な店」としての認知を獲得するに至りました。近隣の競合店が苦戦を強いられる中、わたしの店は月商1000万円は割り込むものの純利益は300万円程度を維持し続けました。

接客業で学んだことは、お客様に「どれだけ気を配れるか」と「たくさん喜んでもらえるか」の追求です。非日常を楽しむ場だからこそ、来店して頂いた時間を格別のものにして欲しいというその一点に集中しました。そして、この頃芽生えた感情は、「1日14時間、月28日で手取り月給20万円弱。残業代も付かず働くのだから自分で経営した方が良くないか?」というものでした。事業の具体的なイメージはなく曖昧でしたが、「経営者になること」にフラグが立った時でした。

【全く違う世界へ】

その後、他の経営者の方からヘッドハンティングの打診も受けていましたが、まさに同じタイミングで母から手伝ってほしいと連絡が入りました。薬剤師である母が、地元の有志の薬剤師たちが資金を出し合って設立する薬局会社の代表取締役に推挙され、新会社を立ち上げることになったためです。

ヘッドハンティングの報酬は、当時勤めていた会社の月給の二倍ほどの月40万円の提示でした。一方、母の会社は薬局事務として月給12万円。これは役員との取り決めで変えられないということでした。それに加えて全役員は、母がわたしを会社に入れることに大いに反対しておりました。そんな条件の中、現在のわたしであれば手取りの多いところを選ぶでしょう。しかし、選んだのは母の会社でした。大卒の26歳ですからもっと欲しいですよね(笑)。

祖父母や親戚は喜んでいました。飲食店の労働者だったわたしがようやく田舎に帰ってくるのだから当然の反応だと思います。

研修先は、すでに自身の店舗を構えている役員の方々の薬局でした。そこへ26歳の男性が「薬局事務」として配属されたわけですから、周囲の目も冷ややかです。別に鳴物入りで入ったわけではありません。短期間であらゆる事を覚えなければならないプレッシャーと、大いなる緊張。そして迷惑をかけないように臨んでいるので常に謙虚であることに努めました。しかし、昼休みやレセプトの残業時には、若手の男性薬剤師からは食後の食器洗いを言いつけられるなど雑な扱いを受け、年配の薬剤師に至っては口すらきいてくれない始末でした。「冷たい世界に足を踏み入れてしまった」という強い孤立感を抱えながらも、心の底では「いつか見返してやる。自分が経営者になった暁には、こうした接し方をする人物が存在しない、心のこもった徹底的なホスピタリティを体現する組織を築いてみせる」という固い決意を胸に、じっと耐え忍んでいました。

次回へ続く→

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この記事を書いた人

現代社会における過剰な情報や物質のノイズを引き算し、人間が本来持つ完璧な状態「ゼロ・ステート」へとチューニングする心閑堂独自の「無為整氣」を提唱。脳科学や量子力学、宇宙フィールドの観点から心身のシステムを紐解き、経営者やプロフェッショナル層を中心に、本来の周波数を取り戻すための完全プライベートセッションを展開しています。

「何かを足す(有為)」のではなく、徹底的な「引き算(無為)」によって、誰もがすでに持っているエネルギーの解像度を上げるオンライン塾(地の塾・天の塾)も主宰。国境や言語を越え、本質的な人生のブレイクスルーを導きます。
お問い合わせhttps://www.iwate-shinkando.com/

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